12/6 集談会(小原崇一郎先生)のご案内
第173回 特別集談会
2023年12月6日(水) 18:00-
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京都立大塚病院麻酔科 麻酔科
帝京大学大学院 公衆衛生学研究科
小原 崇一郎 先生
『どうする?小児の手術室外鎮静・鎮痛: -麻酔科医の視点から小児医療従事者に知っておいてもらいたいこと
An anesthesiologist's perspective on pediatric procedural sedation and analgesia in Japan: how should we come along?』
日本の現状では、慢性的な麻酔科医不足や全身麻酔より過少な診療報酬といった諸問題のもと手術室外の検査・処置時の鎮静・鎮痛(procedural sedation and analgesia: PSA)の施行者として麻酔科医の直接的関与の増加をすぐに期待するのは難しく、その実践の多くを麻酔科医ではない医療従事者に委ねざるをえません。PSAに伴う有害事象は防ぎ得るという認識のもと、諸外国の麻酔科医は、ガイドライン策定や教育体制構築、社会的環境整備など間接的にも関与し、小児医療従事者と協働でPSAの成功率の向上や有害事象発生率の減少を目的とする効率的かつ安全な体制構築に貢献してきました。
北米では、2003年に小児手術室外鎮静に関する多施設共同研究組織(Pediatric Sedation Research Consortium: PSRC)が構築され、多数のレジストリ研究が報告されています。たとえば2021年には、55施設、43万例を超える鎮静症例の解析から、重篤な有害事象の発生率(1.78%: 最多は上気道閉塞)、リスク因子(睡眠時無呼吸症候群、代謝・遺伝疾患、精神発達遅滞、ASA PS class Ⅲ/Ⅳなど)が報告されています。また、鎮静に関する国際的組織(International Committee for the Advancement of Procedural Sedation: ICAPS)からは、救急外来での鎮静前経口摂取制限に関する新基準が2020年に提唱されています。この基準では、リスクを3段階に層別化し、リスクごとに待機的処置と準緊急、緊急時の場合それぞれの経口摂取制限時間が推奨されています。
日本でも麻酔科医の関与のもとで小児PSAプラクティカル・ガイドの作成が進んできています。今回、近年の知見をもとに①PSA前評価やモニタリング、薬剤の選択などにおいて留意していただきたいこと、②PSAの成功率向上や有害事象予防のために麻酔科医が直接的関与を考慮したほうがよい状況、を一麻酔科医の観点からお話し申し上げます。ご聴講くださる方々の自施設での課題解決の一助になれば幸いです。
ご略歴:
2000年 東北大学医学部卒業
2000年から2011年にかけて、聖路加国際病院、国立成育医療研究センター、長野県立こども病院において、小児の麻酔・集中治療・救急医療を中心に臨床に従事
2011年から2014年にかけて、カナダ・トロント小児病院 集中治療部および麻酔・痛み管理科においてクリニカルフェローとして臨床に従事
2014年から埼玉県立小児医療センターなどで臨床に従事しながら、
2017年から2021年まで帝京大学大学院公衆衛生大学院で公衆衛生学を学び、「小児手術室外鎮静」をテーマとした課題研究に取り組み、公衆衛生学博士号を取得
2023年現在、東京都立大塚病院麻酔科で臨床麻酔に従事するとともに、アジア小児麻酔学会(Asian Society of Paediatric Anaeshtesiologists: ASPA)理事、日本小児麻酔学会渉外委員長・鎮静ガイドライン作成委員、帝京大学大学院公衆衛生学研究科非常勤講師として活動中